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【連載】先生、これは英語でどういうんですか?
−生徒が間違えやすいことを、本質的な意味から考え、指導に生かす

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Q, look, see, watch のどれかを入れてみましょう。
・外で何が起こっているか見てほしい。
 (   )  and see what's going on outside.
・足元に気をつけて。
 (   )  your steps.
・暗やみで何も見えない。
 I can't   (   )   anything in this darkness.

答えは…コラムの中で。

第8回 look, see, watchはどう違うんですか?
慶應義塾大学 田中茂範


「何かを見る」と聞いてどんな英語を連想するでしょうか。おそらく、look と see をまず思い浮かべ、それに watchを加える人が多いと思います。これらは中学校の段階で学ぶ基本的な動詞です。しかし、これらをちゃんと使い分けられるかと聞けば、「あまり自信がない」という人が少なくありません。星を見る際には、状況によって3つの動詞のすべてが可能です。「どうしてか?」についてはコラムの最後に説明します。まず、look, see, watchのコアとなる意味をみていきましょう。

look のコア(=「視線を向けて見る」)

図1

家の外が騒がしいとします。そこで「誰か他の人に外で何が起こっているか見てみてほしい」という際に、lookとseeの両方を使って、Look and see what's going on outside.といいます。see and lookという並べ方はありません。先にlookして次にseeするという順番になります。それは、どうしてでしょうか?look のコア(本質的な意味)を理解するとわかります。lookのコアは、図1のように「視線を向けて」というものです。

何かを見るには、まず、それに視線を向ける必要があります。だから、look(視線を向ける) and see(見る)という順番になるのです。

lookのいろいろな使い方

lookのコアの意味は「視線を向けて見る」ですが、そこから look のいろいろな使い方を説明することができます。

まず、lookは、「視線を向ける」先を示すのが通常です。そこで、at, up, in, over, back, through, around などの前置詞や副詞と一緒に使います。look at とatを使う理由がちゃんとあるのです。"Don't look back. Look at him. He's always looking ahead."といえば「済んだことは考えないで。彼を見てごらん、いつだって前を向いて生きているだろう」といった意味になりますが、look back、look at、look ahead はすべて視線をどこに(あるいは何に)向けるかで決まる表現です。

また、「視線を向ける」ということは、look は動作動詞であるということになります。だから、He is looking at the dog. のような進行形にすることができるのです。犬に視線を向けているかどうかは第三者にも見ることができるため、He is looking at the dog. と表現することができるのです。後ほど説明しますが、He is seeing the dog. とはいいません。

seeのコア (=視覚器官(目)が働き、何かを視野にとらえる)

図2

see のコアは「視覚器官(目)が働き、何かを視野にとらえる」というものです。

see のコアには「視覚器官の働き」と「対象を視野に捉える」の2つの要素が含まれています。「視覚器官の働き」に重点を置いた例として、Just born babies still don't see.があり「生まれたばかりの赤ん坊は目が見えない」という意味になります。また、暗闇で何も見えないという状況でも、暗闇では「視覚器官がうまく機能しない」ため、I can't see anything in this darkness. と表現します。

「対象を視野に捉える」の典型例には、I saw a boar in the mountain yesterday. (昨日、山でイノシシを見た)や I can see a lot of stars here. (ここではたくさんの星が見える)が含まれます。実際に、何かを(静止画的に)視野に捉えるというのが see のポイントで、外(第三者)からは(その人に)何かが見えているかどうかはわかりません。これが look との違いです。そこで、He is seeing the dog. とはふつういいません。

また、通常、何かに視線を向けると、それを見ることになりますが、厳密にいえば、look は「視線を向ける」がポイントで、「実際に何かを見る」までは含みません。そこで、I looked over and over again but didn't see anything. (何度も何度もみて見たけど、何もみえなかった)といった表現が可能なのです。

seeの他の使い方

「視野に何かをちゃんと捉える」ということから「わかる」という状況でもsee を使います。He doesn't see that it matters. (彼はそれが大事だということがわからないのだ)だとか I see what you mean.(おっしゃることはわかります)がその例です。

通常、「見える」という意味合いではsee を進行形にすることはしません。しかし、「人物を見る」ことから「会う」、さらに「付き合う」と意味が展開した場合には、I am seeing John. (私はジョンと付き合っている)のように進行形で表現します。付き合えば「ジョンを習慣的に見る状態になる」ということになります。そこで、習慣的意味を表すのに進行形が使われるのです。

watchのコア (=動きがあるものを注意して見る)

図3

look とsee の違いに加えて、watch も見ておきましょう。watch のコアは、「動きがあるものを注意して見る」です。

何か変化を予測しながら見ているというのがwatch です。I usually watch TV after dinner. (夕食後たいていTVを見る)のTVはテレビ映像のことで、テレビ受信機ではありません。映像はどんどん変化します。Could you watch the children while I'm away?(ちょっと離れている間、子どもたちのことを見ていてもらえますか)でも、「子どもは動き回るもの」という前提があり、「しっかり見張っている」という意味合いがあります。Look! だと「ほら、みて」という意味合いですが、Watch (out)! だと「気をつけて」となります。

Watch your steps. (足元に気をつけて)も危ないことがあるかもしれないので注意を向けておくということです。Watch your language. (コトバ使いに気をつけなさい)は、悪態をついたときなどに戒める表現ですが、相手のコトバが乱れないように注意せよ、という意味です。

「昨夜、テレビでおもしろい映画を見た」は、通常、I watched a good movie on TV last night.といい、「昨夜、映画館でおもしろい映画を見た」は、I saw a good movie in the theater last night. といいます。前者は、on TV があるため「流れている映像」のイメージが強くなり、watch と相性がよくなります。一方、映画館は場所であり、そこで映画を見たという場合は、「流れる映像というよりも1つの作品を見た」という意味合いが強くなり、ちょうど絵画を視野に捉えるように映画作品を視野に捉えたという表現だといえるでしょう。「先週、映画を3本見た」は I saw three movies last week. となります。それは、作品として見る経験をしたということなので「何かを静止画的に見る」の see が好まれるのです。

まとめ

lookもseeもwatch も「見る」ですが、区別の仕方としては、look は「何かに視線を向けて見る」、see は「何かを静止画的に見る」、watch は「何かを動画的に見る」と考えておけばよいと思います。「星を見る」というケースで考えると、星に視線を向けて見るのであればlookが、星が見えるということであればseeが、そして、じっと星(の変化)を見ているのであればwatchが使われます。

 

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