≫ARCLEについて|Outline≫ECFとは|About ECF≫研究ノート・研究会レポート|Reports≫英語教育研究・調査|Data Base≫書籍・発刊物|Data Base

≫このページを印刷

中1後半に生徒をつまずかせないようするために
「過去形の導入前・指導の中でしたいこと」

東洋大学附属姫路中学校・高等学校 加藤 京子


過去形の導入前に、作文「○○さんの1日」を書かせる

作品@
作品@

作品A
作品A

 過去形を学習するということは、動詞の語尾に-edを付ける操作や、不規則動詞の形を覚えることではなく、日記や物語を書けるようになることです。そのために必要な動詞や関連する語彙の復習が、過去形の導入前に必要です。その復習は、単語テストやドリルではなく、「○○さんの1日」という作文を書くことで行うのはいかがでしょうか。「○○さんの1日」は三人称で書くのですが、映画や漫画の主人公、ペットの1日を、想像力を用いて説明します。生徒の伸び伸びとした発想を促すには、教師がまず柔軟に発想し、大胆でユーモアのあるモデル作文を作る必要があります。ALTと相談しながら、楽しいモデル作文を作りましょう。生徒は漫画やゲームの主人公、芸能人、歴史上の人物、時のニュースで注目の人物など、さまざまな人物について書きます。作品@は自分の愛犬の1日を書いた生徒作品です。想像して書くのが苦手な生徒は、家族や友人の1日を書いてよいとします。その際、以前に一人称で書いた作品「私の1日」を友人と交換して、三人称で書くようアドバイスします。作品Aはそのようにして書いた作品です。一人称で生活スケジュールを書くことはどの教科書でも扱われる題材です。その指導をしたときの生徒作品を利用すれば、短時間で効率よく、楽しく、どの生徒にも「○○さんの1日」を書かせることができます。三人称単数動詞の使い方の復習になるばかりでなく、作品Aの教師による訂正からもわかるように、この方法は代名詞の理解にも役立ちます。 ここまでできるようにしておくと、そこで使った単語を利用したり、動詞を過去形にしたりすることに注目した過去形の指導がしやすくなります。

過去形の導入

1)動詞を選ぶ
 例えば、「休日にしたことを話そう」という設定で最初の授業を進めるとします。規則変化動詞を用いて導入しますが、どの動詞を使えば教師も生徒も話しやすいか考え、教科書の語彙も検討して選びます。教科書に出ていなくてもenjoyは便利なので1学期から使っておくとよいでしょう。goは不規則変化動詞ですが、必要とする生徒が多いだろうと考えてあえて入れています。規則変化動詞だけで教えたいときは取り扱わなくてもよいでしょう。

2)4コマの絵で語る
 yesterday / last weekend といった過去を表す語句を導入した後、4枚の絵を1枚ずつ黒板に貼りながら教師が休日にしたことを語ります。

(例)It was fine last Sunday. What did you do last Sunday? 絵@I went to Osaka. I visited my friend. She lives in the condominium near Osaka Castle.A We talked a lot. Then she cooked lunch for me.BAfter lunch we enjoyed shopping at a department store. C Did I go to Osaka by car? No. I used the highway bus. It takes only 1 hour from my town to Osaka, so I use the bus very often.

導入に用いた4枚の絵

導入に用いた4枚の絵

 

3) 板書と文法説明・練習
 絵について教師が語った内容を日本語で確認し、-ed語尾の付いた動詞カードを絵のそばに貼りながら、過去形について簡潔に説明し、最初は単語で、2回目は文で英語をリピートさせます。文の2つ目は三人称の主語で言い換えて言わせます。 T: I visited my friend in Osaka last Sunday. (絵の中の人物を指しながら) Ms. Kato visited her friend in Osaka last Sunday. Repeat. Ss: Ms. Kato visited her friend in Osaka last Sunday. T: We talked a lot. (絵の中の人物を指しながら) They talked a lot. They talked and talked for many hours. Ss: (リピートする) 生徒のリピートをよく聞き、過去形の語尾が言えていない生徒が多いときは動詞部分を繰り返す。 T: talk,talked Ss: talk,talked  (以下略)
注)絵を用いた語りを生徒が十分理解できているなら、日本語での確認はせず、英語で授業を進めます。

4)生徒が日曜日にしたことを絵で描く
 ワークシート@を配布し、日曜日にしたことを2つ、(1)の中に簡略な絵で表すよう指示します。机間をまわりながら、絵を見て Oh, you played baseball with your friends. / You listened to music. What did you listen to? などと話しかけます。何を描けばいいか迷っている生徒には、(2)のビンゴシートの絵を指しながら当てはまるものはないか尋ねます。どの生徒も1つ絵を描いたら次に進みます。

5)動詞の過去形を使って英文を言う練習

 ワークシート@の(2)のビンゴシートの絵を使って、16個の動詞の過去形を言う練習をします。(例) go−went―I went to the park yesterday. cook−cooked−I cooked an omelet. talk―talked I talked on the phone. 16個の動詞についてこの口慣らし練習が終わったら、自分が絵に描いたことを各自英語で言わせます。次に、1人ずつ生徒を指名し何人かに答えさせます。最初は完全な文で答えられなくても、教師が内容を受け止めながら導くうちに、どの生徒も過去形を使って言えるようになります。動詞の原形―過去形まででとどまらず、それを使った文まで練習しておくことで、次に自分の言いたいことを文で表現することにつながります。

(例) S1: cook lunch. T: Oh, you cooked lunch. For your family? S1: Yes. T: Say "I cooked lunch for my family. S1: I cooked lunch for my family. T: Good! Class, repeat after me. I cooked lunch for my family last Sunday. Ss: I cooked…..

6) ビンゴゲームでたくさん英文を聞き、話す
 "What did you do last Sunday?"という問いを練習させます。続いてビンゴゲーム形式で、生徒同士で質問と答えをたくさん言う練習をさせます。先ほどの(2)のビンゴシートを使って行うビンゴのルールを説明します。質問して相手が使った動詞のマスに相手に名前を書いてもらい、いずれの方向にでも1列揃えばビンゴ。1列揃った生徒は教師のところに来てハンコかステッカーをもらい、さらにもう1列完成させます。全員が1列できたころを見計らってゲームオーバーにします。

7)ライティング練習
 6)のビンゴゲームで使った語彙と英文を文字で確認させます。ワークシートAの(2)を参考にしてください。  ライティングさせるときに大事な指導があります。机間指導しながら、主語‐動詞‐名詞だけからなる単純な文を書いている生徒には質問しながら副詞句を付け足すよう促します。例えばI played soccer. とだけ書いている生徒には、次のような問いを投げかけます。Where did you play soccer? At school? In the park? / When did you play? In the morning? All day? For two hours? / Did you play soccer with your brother? With your friends? そのように何人かに質問して修飾語句を付けるヒントを与えていると、気付いた他の生徒は自発的に付け加えるようになります。 過去形の文は時間や状況の設定がないと意味をなしません。例えば I studied math. とだけ書かれていて、いつのことかを明示する語句や状況設定がない場合、この文はS-V-Oの形であっても、コミュニケーションは成立しません。過去形の指導では、動詞の過去形の形だけでなく、時間情報を第一に、加えて状況や目的などを示す情報を添えて使うことを習得させていかなければならないのです。

過去形を使って書く


作品B

 過去形が理解できたらなるべく早く、1文ではなく数文のまとまりのある、すなわちディスコースのある英文を書く練習に進みたいものです。そうすることで動詞の過去形の規則変化と副詞句を合わせて使いこなせるようになります。しかし朝起きてから時間の流れに沿って書くにはたくさん不規則動詞が必要です。不規則動詞の過去形を教えるまでは次のいずれかの方法で書かせてはどうでしょう。

1)1、2コマ漫画
 前出のビンゴシートのようなリストを与え、使えそうな動詞を選び、その日したことの、ある場面を絵に描き、英文説明を付けさせます。 (例1) 遊園地に行った絵に添えて I visited●●(アミューズメントパーク) with my family on March 20th. We watched the parade. I like ●●(キャラクターの名前). (例2) 新幹線の絵と雷門の絵に添えて I visited Tokyo with my mother and aunt on March 25th. We used the Shinkansen. We visited Asakusa.

2) 空想日記
 どこかへ行って(visit)、誰かと何かをして(use/ watch/playなど)、食事を楽しんで(enjoy)、その後(And then) 何かをする(learn/ visit/ talkなど)という4コマのストーリーを構成させます。ある生徒作品(作品B)に添えられたのは次のような英文です。
@I visited Wonderland. Alice is very cute. AI enjoyed tea party with Alice. BThen Alice visited my house. We enjoyed talking in my room. CAnd then my mother cooked dinner of Japanese food. Alice liked umeboshi.
 他にも、アメリカに行って有名な映画監督と映画について語ったり、北極で鯨と遊んだりなど自由な発想の楽しい作品がたくさんありました。その後、生徒は不規則動詞の学習を終えると、過去形の規則・不規則の両方を使って、冒頭の1日の生活を過去形ですらすら書くようになっていきます。

最後に

 「中学1年生の英語力ではたいしたことは書けない」と思いがちですが、現在形を習えば現在形で、canを習えばcanを使ってと、学習目標の文法事項を用いて、「楽しみながら」「気軽に」「まとまりのある内容」を書く機会を生徒に与えていくと、過去形のころには生徒の書く力も意欲も驚くほど伸びています。多少の間違いはしても、作品を書き上げる達成感を味わい、友人の作品に刺激を受けることで、書く意欲が高まり、工夫して書くようになるからです。むしろ、書く力の基礎は中学1年生で決まる、と言ってもいいくらいです。 そして、生徒には想像力を膨らますトピックを与えたいものです。現実だけを書いていては語彙もおのずと制限されます。また、現実の生活では苦労も悩みもあります。しかし、空想したことを書くテーマだと自由です。先に紹介した4コマ漫画に見るように、生徒たちは行きたい世界で遊び、自分の生活には無い新しい語句を使い、必要な単語を探して辞書を引き、「こうだったらいいなあ」という願いを育んでいきます。過去形と現在形の文が混在する空想作文「旅先からの手紙」を書かせていたときのことです。ある生徒が「今じゃなくて、大人になってから先生に手紙を書いている、にしたい」と言って、「27歳になった彼が仕事の旅先スイスで中学時代の級友に再会し、お互い話すうちに恩師である私のことが懐かしくなって書いた手紙」を書きました。英語の学習によって、自分の未来を肯定的、建設的にイメージする機会をより多く持たせることも可能なのではないでしょうか。

 
↑ページトップへ