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2010年度 第1回 研究会レポート
ARCLE研究会 小学校における外国語活動および欧州言語教育政策の動向について

2010年6月3日にARCLE研究会を開催しました。今回は、必修化を目前に控えた小学校英語と、欧州での言語教育政策関連、特にCEFRを中心とした動きの2点について取り上げました。


必修化後の小学校英語について

2011年度の必修化を目前に控えた小学校英語ですが、移行措置最終年度の今年度、7割の小学校では、すでに必修化後と同じ年間時数で外国語活動が実施されています。このような現状に関する情報共有と課題について検討しました。

上智大学 吉田研作

小学校英語活動の指導者として「英語のモデル」ということを考えれば、ネイティブ・スピーカー(あるいはそれに近い人)であることに越したことはないが、英語を使ったコミュニケーターとしては、日本人のほうがよい。子どもたちは、アメリカ人が英語を話しているのを見て「格好よい」と思うのではなく、日本人が英語でコミュニケーションしているのを見て「すごい」と思うものだ。だから、担任も外部指導者も、日本人として正々堂々と英語を使うようにしたい。加えて、日本人外部指導者のよいところは、英語が苦手な担任との打ち合わせがうまくいくことだ。最近の外国人指導者の中には、日本に来て間もないなど日本語があまりできないことがある。そのような場合、授業前の打ち合わせは担任にとって非常に負担になるため、外国人指導者にお任せの授業になってしまうことがよくある。このような事態を避けるためにも、日本人で英語が堪能な人が外部指導者になることは非常によいことだ。

青山学院大学 アレン玉井光江

外国語活動の導入に伴って、高学年の担任をするのはできれば避けたいと思う小学校の先生が増え、校長先生が困っているという話を聞きました。公立小学校に英語活動が実験的に導入されたのは1992年で、2002年からは「総合的な学習の時間」の中で実施されています。実験的な導入から数えると、小学校で外国語活動が始まって早19年ですが、現場の先生方の中には英語関連の活動に対して大きな負担を感じている人が少なくありません。いろいろな不安や不満はあるようですが、最も大きな不安は英語について、特に発音に関するもののようです。小学校では音声中心の指導をすることになっているだけに、その悩みは深いようです。

慶應義塾大学 田中茂範

小学校での外国語活動において、英語の何をどう児童に提示するかというWHATとHOWは喫緊の課題となっている。目標として掲げられている「英語力の素地」は定義することが困難な概念であるが、活動(教育)効果を生み出すには、関係者がそれを操作的に定義し、個別具体的な活動とリンクさせていくことが不可欠である。操作的定義の方向は「can-do 記述」の充実化に向けられることになるだろうが、その際に肝要なのは、can-do 記述の抽象レベルの調整であり、階層化された記述である。関係者が作成するそうした記述を相互比較することで、妥当性と実効性のある目標設定が行えると考える。

欧州言語教育政策と日本の英語教育への影響について

欧州で生まれたCEFR(Common European Framework of Reference for Languages : Learning, teaching, assessment ) 1は、世界的に注目を集めています。CEFRの浸透状況と、欧州および他の地域での言語(英語)教育に与えた影響、および今後の日本の英語教育への影響を検討しました。

東京外国語大学 根岸雅史

CEFRの影響力は、研究者や行政のレベルでは、欧州のみならず欧州外にも広がりつつある。これに対して、教育の現場では確実に広がりつつはあるものの、まだ緩やかであるとの印象である。また、CEFRに関連して、欧州での前期中等教育課程修了時(日本での中3修了時)の外国語の能力調査を行うSurveyLang2が進行中で、2011年に調査実施、2012年に結果公表の予定である。言語教育のPISA版といわれているが、この結果をどう日本が受け取るかが重要となるであろう。日本の英語教育への影響についても、注意深く見守っていく必要があるだろう。


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