2011年5月22日にARCLE研究会を開催しました。今回は、4月より本格実施が始まった小学校「外国語活動」、2010年度11月より開始した「外国語能力の向上に関する検討会」、欧州16カ国における外国語能力の調査SurveyLangの3点について取り上げました。
2011年4月より本格実施が始まった小学校「外国語活動」について、現在を出発点として、今後に向けての課題について議論がなされました。
現場からの意見を聞くと、これから「小中連携」「評価」「格差」が問題になってくると思われる。4月から、初めて「外国語活動」に取り組む学校では、毎時間の授業を進めるだけで精一杯のようであり、一方、モデル校や特区で長く取り組んでいる学校では、かなり先進的な授業が展開されている。改訂が進んでいる次の『英語ノート』の動向も気になるところではあるが、次の学習指導要領改訂に向け、真剣な話し合いを始めるべきであろう。アジア諸国での英語教育の状況を見ても、コミュニケーション能力と言語のスキルを別ものとする現在の路線は修正せざるを得ないと考える。
「外国語活動」があるため、高学年を担当したくないという先生が出てきているという。これは、実際の指導のための研修や教材等が十分に準備できていないことの表れでもある。担任中心で進めるはずだった「外国語活動」ではあるが、担任には重荷であり、行政側がその負担を軽くするため、また、保護者への印象を良くするために外国語指導助手の採用を増やすことにつながったようである。その結果として、外国語指導助手の派遣や請負業務に関する問題等も露呈してきている。移行期間を通して『英語ノート』を使用している小学校の数は確実に増えてきているはずであるが、未だ担任が指導しやすい状況が生まれているとは言えないようである。
日本の英語教育に関する目標設定の在り方、指導方法や教材の在り方などの方策について有識者等との意見交換を行い、今後の施策に反映させるために、文部科学省が「外国語能力の向上に関する検討会」を2010年11月に設置しました。そこでの議論を通して見えてきた課題が共有されました。
「外国語能力の向上に関する検討会」での議論を通して、今後の日本の英語教育を改善していくためには、どうしても教員の英語力および授業力の向上を図らなければならないことがわかってきた。どんなに立派な目標を立てていても、それを実現するためには、結局は、教師に英語力がなければ、また授業力がなければ、だめである。教室内での英語の授業の在り方にしても、教室を離れた英語の使用場面の拡充にしても、結局は教師が中心にならなければならないのである。しかし、教員研修には、Pre-serviceとIn-serviceの両方があるので、大学の教職課程でできる研修、また、教師になってからできる研修に分け、その内容を明確にする必要がある。教員研修には、官のみならず、民の力も十分活用する必要がある。
PISAの言語教育版と言われる、欧州16カ国における外国語能力の調査SurveyLangの内容や実施状況について共有されました。
SurveyLangとは、欧州の16カ国において、前期中等教育最終年次における外国語能力の調査を行うものである。各国における学習者数の上位2つの外国語の調査を行っており、イングランド以外のすべての国で英語が含まれている。2011年の第1四半期にテストとアンケートから成る調査を行い、現在はデータの分析中である。最終報告書は来年に公開される予定。調査は、パソコンを用いて実施され、テストはリスニング・リーディング・ライティングから成る。測定するレベルはCEFRのA1−B2である。ケンブリッジ大学ESOLのNeil Jones氏によれば、データが漏れない形であれば、日本のような欧州以外の国も参加は不可能ではないとのことである。