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今年度はARCLE理事によるコラムを掲載していきます。今回は、信州大学・酒井英樹先生です。

【コラム】デジタル教科書について(後編)


酒井英樹(信州大学学術研究院教授)

*この記事の前編はこちら


4. デジタル教科書の活用 学び方の例

 次に、学習者用デジタル教科書に掲載されている活動の学び方の例を示します。

@聞くこと

 学習者用デジタル教科書に掲載されている聞くことの活動の学び方を紹介します。
 学習者用デジタル教科書の特徴として、(1)音声のスピードを変えられる、(2) カラオケのようなハイライト表示があり、音声と文字を一致させやすい、(3) 英語字幕やスクリプトなどを活用できる、(4) イラストやアニメーションなどと共に音声を聴くことができる、が挙げられます(URLやQRコードのリンクを経由してウェブサイトにアクセスする必要がある場合があります)。これらの特徴を活かした活用方法を示します。
 まず、英語を聞く前に、コミュニケーションを行う目的や場面、状況等を把握する段階です。小学校では、下記の1のステップは、「指示文を読んで、だれがどんな内容を話すのかを確認しよう」という言い方の方がわかりやすいかもしれません。2と3のステップは、中学校や高校向けです。

  1. コミュニケーションを行う目的や場面、状況等を把握しよう。
  2. どのような聞き方が求められているのかを把握しよう(必要な情報を聞き取るのか、概要を捉えるのか、要点を捉えるのか)。
  3. 必要な情報を聞き取る場合には、どのような内容や英語が話されるかを予測してみよう。

 次に英語を聞いて意味を理解する段階です。4のステップは、中学校や高校向けです。

  1. 自分の力で聞いてみよう。
  2. スピードを遅くして聞いてみよう。
  3. イラストやアニメーションなどや、前後関係を頼りに、(わからなかった部分の)内容を推測しよう。
  4. スクリプトや字幕などで、文字で英語を確認しよう。知らない語句や表現などがあれば、意味を調べよう。
  5. 音声を元のスピードでもう一度聞き、音声的な特徴を捉えよう。

 最後に、英語を聞いて情報を整理する段階です。この段階が、「思考力、判断力、表現力等」に関連します。

  1. 目的(必要な情報を聞くのか、概要を捉えるのか、要点を捉えるのか)によって、得た情報を基に検討しよう。

A読むこと

 学習者用デジタル教科書を用いた読むことの活動の学び方を紹介します。読むことについては、中学校や高等学校を対象にしています。
 読むことに関しては、学習者用デジタル教科書の特徴として、線や文字などを書き込めるということが挙げられます。紙の教科書の場合、いったん書き込んでしまうと、消せませんが、学習者用デジタル教科書の場合、容易に消去できる点も利点となります。
 まず、意味を理解するために読む段階です。4の段階では、辞書だけでなく、機械翻訳などを活用することも可能です。5のステップは、教師が個々の生徒の学習の状況を把握するためにも役立ちます。生徒のデジタル教科書の書き込み状況を確認することによって、下線が残った部分の理解を促進する支援を行ったり、全体で取り上げたりすることができます。

  1. 自分の力で読んでみよう。
  2. わからない部分に下線を引こう。
  3. イラストなどや前後関係を頼りに、(わからなかった部分の)内容を推測しよう。
  4. 知らない語句や表現、文などがあれば、意味を調べよう(機械翻訳を使った場合には、どうしてそのような意味になるのかを考えよう。)
  5. 意味がわかった部分の下線は消去しよう。

 次に、英語を読んで情報を整理する段階です。この段階が、「思考力、判断力、表現力等」に関連します。2のステップで、書き込みを推奨します。概要を捉えたり、要点を捉えたりする助けになります。3のステップは、家庭学習などで発展的に行えるものです(授業では、読んで考えたことを生徒同士で伝え合う活動などを行うことができます)。

  1. 目的(必要な情報を聞くのか、概要を捉えるのか、要点を捉えるのか)によって、得た情報を基に検討しよう。
  2. その際、書き込みを行おう。
    • 要点の部分に下線を引こう。
    • 番号をつけよう。
    • 関連する情報を線で結ぼう。
    • for example、first/second、finally、in conclusion などのディスコースマーカーに○をつけよう。
    • 事実を示す文と考えを示す文に異なる色の下線を引こう。
    • どこからどこまでが1つのトピックに関する記述なのか、囲みをつけよう。
  3. 概要 (内容を短くまとめたもの)を書いて、それに対する感想を書こう。あるいは、要点(書き手が最も伝えたい内容)を書いて、それに対する自分の考えを書こう。

B話すこと

 ここでは、学習者用デジタル教科書に掲載されている聞くことの活動を活用して、話すことの学び方を紹介します。学習者用デジタル教科書では、英語の音声を途中で止めることができます。その機能を活用します。
まず、話すこと[やり取り]の学び方です。1と3のステップが、「思考力、判断力、表現力等」に関連します。

  1. やり取りの工夫(応答の仕方、コメントの仕方、相づちの打ち方、質問の仕方、質問の答え方など)を意識して、対話を聞こう。
  2. 音声を適宜止めて、聞いた英語表現を繰り返して発音してみよう(最初は、どんな意味なのかを考えながら発音してみよう。慣れてきたら、英語の音声の特徴を捉えながら発音しよう)。
  3. 音声を適宜止め、自分だったらどのように応答するか、質問するかなどを考えて、話してみよう。

 次に、話すこと[発表]の学び方です。

  1. 音声を適宜止めて、聞いた英語表現を繰り返して発音してみよう(最初は、どんな意味なのかを考えながら発音してみよう。慣れてきたら、英語の音声の特徴を捉えながら発音しよう)。
  2. 音声を適宜止め、自分だったらどのように表現するかを考えて、話してみよう。
    例、I have lived in Tokyo for 10 years. という音声を聞いた時に、自分が長野県に13年間住んでいる場合には、I have lived in Nagano for 13 years. と話そう。

C書くこと

 ここでは、書く前に、学習者用デジタル教科書を活用してプランニングする方法を示します。1と2のステップは、語句や表現の思い起こしの助けになります。3のステップは、「思考力、判断力、表現力等」に関連します。これらのステップは、実際に書く活動の前や最中に、適宜実施すると良いと思います。

  1. これまで学んできたページを見て、音声を聞きながら復習しよう。
  2. トピックに関連する語群の音声を聞こう。
  3. どのようなまとまりのある文章で書かれているのか(どのような構成で書かれているのか)を意識して、これまで学んできた英語の文章を読もう。

 学習者用デジタル教科書の実践例などの資料は、文部科学省のホームページ「学習者用デジタル教科書について」にまとめられていますので、関心のある方は参照してください。



 

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