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第2部 講演
「『授業は英語で』なぜ行うのか
―生徒・教師は教室でどのように変わるのか」

文部科学省 向後 秀明


新学習指導要領「外国語」の本来的なねらいについて、改めて理解を深めるために、そのねらいや留意すべき点を具体的な事例なども交えて解説いただき、ねらいに沿った指導を展開していくために気をつける点をお話しいただきました。

発表の概要
1.

日本の高校生の意識

調査結果から、日本の高校生は自己肯定感や満足感、そして学校生活に対する充実感も低く、悩みが深い様子がうかがえる。先生方には、是非、このような子どもたちを救ってほしい。
2.

「生涯学習」の視点−学校は生涯にわたって学び続ける基盤をつくるところ

学校は教育を完結する場ではなく、生涯にわたって学習するための基盤をつくるところである。学習者の側からすれば、自律して学習していくことができるように、その基盤をつくる場である。
3.

学習指導要領改訂の経緯とポイント

現行の学習指導要領と変わらず、「生きる力」の理念を継承。この「生きる力」をもとにした、外国語教育の改善に向けての基本方針のポイントは、「4技能を総合的に育成する指導を充実するよう改善を図る」こと、「4技能を統合的に活用できるコミュニケーション能力を育成する」ことなど。
4.

「授業は英語で行うことを基本とする」−新学習指導要領外国語科「第3款の4」

「授業は英語で行うことを基本とする」ことは、それ自体が目的ではなく、目的を達成するための手段である。このねらいは、英語による言語活動を授業の中心にするということであって、生徒が授業で英語を使って言語活動をしていることが重要。
5.

新しい科目のポイント

新学習指導要領外国語科の目標は「コミュニケーション能力を養う」ことだけであり、高校の外国語科の科目は一新される。
6.

新しい科目を上手く展開していくために必要なこと

  • (1) 校内研修
  • (2) 学習到達目標の設定と学習指導計画の作成
  • (3) 教科書などの教材の選び方
  • (4) 授業展開
  • (5) 観点別学習状況の評価
  • (6) 学校全体での取り組み

1.日本の高校生の意識

まず、財団法人日本青少年研究所*1 が2011年2月に発表した「高校生の心と体の健康に関する調査」 から、日本の高校生の意識を考えてみたい。「私は価値のある人間だと思う」という問いに対して、アメリカの高校生は約6割が「全くそうだ」と回答した一方で、日本の高校生は1割に満たなかった。また、「自分に満足している」かどうか聞いたところ、アメリカの高校生は4割以上が「全くそうだ」と答えたが、日本では「あまりそうではない」と「全然そうではない」の合計が8割を超えた。学校での状況についても、「学校において自分を理解して認めてくれる先生がいる」かどうかという問いには、「全くそうだ」と回答した高校生はアメリカで5割を超える一方、日本では1割に満たない。また「私は先生に優秀だと認められている」という問いに対しても、「全くそうだ」と答えた高校生は、アメリカで4割を超える一方、日本ではわずか2%という結果だった。このように、日本の高校生は自分自身への評価や満足感、そして学校生活に対する充実感も低く、悩みが深い様子がうかがえる。先生方には、個々の生徒の様子をよく見て、悩みを抱えているかもしれないことを理解していただき、是非、このような子どもたちを救ってほしいと強く思っている。

*1 財団法人日本青少年研究所(2011)
「高校生の心と体の健康に関する調査−日本・アメリカ・中国・韓国の比較−」調査概要
http://www1.odn.ne.jp/youth-study/reserch/2011/gaiyo.pdf

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2.「生涯学習」の視点−学校は生涯にわたって学び続ける基盤をつくるところ

始めに、教育を生涯学習と学力という視点からお話しし、そこから学習指導要領の改訂がどのように行われ、新学習指導要領外国語の「第3款の4」での「授業は英語で行うことを基本とする」ことがどういう意味を持つのかをお話ししたい。

「生涯学習」について、先生方は実感として考える機会は多くはないかもしれないので、ある実業高校での事例をご紹介したい。その学校の生徒の中に、人とコミュニケーションをとるのが非常に苦手な生徒がいたが、英語の授業ではペア・ワークやグループ・ワークが多いために、教師も非常に気を遣った。しかし、周囲の生徒がその生徒のことをとてもよく理解し、温かくサポートをしてくれ、その生徒も周りの生徒もお互いに成長できたとのこと。当該生徒が卒業するにあたって、次のようなメッセージを英語を担当した教師に贈ってくれた。

「私は人と話すのが苦手で、英語も苦手だったけど、先生は授業の中でどうしても人と話さないといけない状況を作ってくれたから、休み時間では話さない人ともいっぱい話せて、自分のこともいっぱい話せて、クラスの仲間のこともいっぱい知ることができて、本当に楽しかったです。  私は、英語の授業の時だけ、別人になれたような気がします。公開授業の時も、緊張したけど、いつも通りみんなで楽しくできて、とってもいい思い出です。先生、本当に、本当にありがとう。これからも、英語勉強するね。」

人と話すのは苦手な生徒だったが、この教師は生徒を英語嫌いにさせず、これからも英語を勉強するという意欲を持たせて卒業させることができた。こういうことが「生涯学習」の考えだ。では実際に、今紹介した生徒が所属しているクラスの授業の一部をご覧いただきたい。

「生涯学習」に関する規定は、教育基本法に下記のように新設された。

○ 教育基本法(平成18年12月22日法律第120号)
第3条
国民一人一人が,自己の人格を磨き,豊かな人生を送ることができるよう,その生涯にわたって,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

つまり、学校は教育を完結する場ではなく、生涯にわたって学習する基盤をつくるところであることを意味している。学習者の側からすれば、在学時だけではなく学校を卒業した後でも自律して学習していくことができるように、その基盤をつくる場であるということである。この点を理解していない高校では、「来年の目標は、国公立大学に50名以上合格させること」という指標を掲げてしまう。しかし、これは学校の都合であって、子どもたちの学びを考えるならば、「国公立大学50名」に入らなかった生徒たちにも、それぞれのキャリアプランがあって、それぞれの人生があることを忘れてはいけない。

「学力」については、その重要な要素として、学校教育法第30条の第2項で、@基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、Aこれらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、B主体的に学習に取り組む態度を養うこと、と規定している。従来の教育では@の知識・技能の習得に偏りがちだったが、これからは@とAのバランスが大事である。Bの主体的に学習に取り組む態度が「学力」に含まれることもおさえておきたい。

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3.学習指導要領改訂の経緯とポイント

ご存じのとおり、学習指導要領の改訂は、中央教育審議会 での答申を受けて行われているが、現行の学習指導要領と変わらず、今回の改訂による新学習指導要領でも「生きる力」の理念を継承している。また今回の答申の中で特徴的なのは、この「生きる力」の意味や必要性について、文部科学省による趣旨の周知徹底が必ずしも十分ではなかったことを初めて認めている点である。

では「生きる力」とは何か。それは「確かな学力」、「豊かな人間性」及び「健康・体力」の3つである。「確かな学力」については、先ほど述べた学校教育法第30条の第2項に規定された学力であることに気をつけたい。

図.  そもそも「生きる力」とは

そもそも「生きる力」とは

この「生きる力」をもとに、中央教育審議会*2 から外国語教育についてどのような答申があったかというと、まずは、コミュニケーションの中で自らの考えなどを相手に伝える「発信力」の育成がより重要になっていることが挙げられている。また、中学・高校を通じて、コミュニケーションの中で「基本的な語彙や文構造を活用する力が十分に身についていない」ことが指摘されている。この点は誤解されることが多いが、“語彙や文構造を活用する力が身についていない、だから練習問題をする必要がある”ということではない。あくまでも、「基本的な語彙や文構造」を実際のコミュニケーションの場面で使うことができるように指導しなければならない。この点以外にも、学年が進むにつれて英語嫌いが増えている点や、「オーラル・コミュニケーションT」において「聞くこと」や「話すこと」を中心とした指導が十分になされていない実態がある、といったことが指摘されている。

そして、この答申を受けて示された学習指導要領外国語科の改善に向けての基本方針のポイントは、まず、「4技能を総合的に育成する指導を充実するよう改善を図る」ことと、「4技能を統合的に活用できるコミュニケーション能力を育成する」という点である。「総合的」とは、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つの技能すべてという意味である。また、「統合的」というのは、これらの4技能のうち2つ以上の技能を絡めるという意味で、例えば、聞いたり読んだりしたことに基づいて自分の意見や考えなどを伝え合うといった活動が考えられる。また、次のポイントとしては、内容的にまとまりのある発信をできるように目指すことである。これは、いわゆる“英会話”を教えてくださいということではない。先に述べたように、4技能を統合した言語活動が必要であるということだ。最後のポイントは、今回の改訂の1つの特徴でもあるが、外国語だけでなく、すべての教科において、中学校段階での学習事項の定着をお願いしている点である。中学校段階での学習の定着が不十分である場合には、これらの学習事項の定着を図った上で、高等学校の学習に円滑に移行させてもらいたい。このことは、外国語科において、「コミュニケーション英語基礎」を創設するもとになった考えである。

*2 中央教育審議会 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gaiyou/010201.htm
審議会の主な所掌事務

(1) 文部科学大臣の諮問に応じて,@教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項,Aスポーツの振興に関する重要事項を調査審議し,文部科学大臣に意見を述べること。

(2) 文部科学大臣の諮問に応じて生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項を調査審議し,文部科学大臣又は関係行政機関の長に意見を述べること。

(3) 法令の規定に基づき審議会の権限に属させられた事項を処理すること。

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4.「授業は英語で行うことを基本とする」−新学習指導要領外国語科「第3款の4」

新学習指導要領を告示した際、外国語科で特に注目されたのは「第3款の4」である。

英語に関する各科目については、その特質にかんがみ、生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする。その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮するものとする。

本規定の「授業は英語で行うことを基本とする」という部分が特にクローズアップされたが、大切なのは、これ自体は目的ではなく、生徒のコミュニケーション能力を養うという目的を達成するための手段だということである。このねらいは、英語による言語活動を授業の中心にするということで、生徒が英語に触れる機会や実際にコミュニケーションの場面で英語を使う機会を充実する、ということである。つまり、授業では、生徒が英語を使って言語活動をしていることが重要で、教師が一方的に英語をしゃべっていて生徒はそれを聞いているだけという状態では、第3款の4の目的を達成できていないことになる。また、新学習指導要領外国語科の解説では、英語に関する各科目を指導するにあたって、文法について説明することに偏っていた場合は、その在り方を改める必要がある、と踏み込んだ記載になっている*3 

日本語の使用については必ず議論になるが、確かに日本語を100%禁止しているわけではない。しかしながら、日本語を使用する場合でも、「英語による言語活動を行うことが授業の中心となっていれば」ということが大前提である。また、「必要に応じて」であり、必要がなければ使わないということである。当然のことながら、日本語だけの授業というのはあり得ない。また、新学習指導要領外国語科の解説では、日本語使用の事例として「文法の説明」をあげているが、これは文法の説明は日本語で行ったほうがよいという意味ではない。また、文法を“説明する”という概念にとらわれすぎていると、参考書や問題集のようなものに書かれていることを教師が英語で説明するといったことになってしまいがちである。しかし、文法はあくまでもコミュニケーションを支えるものとして位置付け、4技能を統合した活動と結びつけて使えるように指導をしてほしい。例えば、当該文法事項を多様な文の中で聞いたり読んだり、たくさん話したり書いたりする中で実際に使えるようにしてほしい。

そして、この新学習指導要領「第3款の4」は、外国語科、英語科のすべての科目に適応されることにも留意していただきたい。

*3 高等学校学習指導要領解説 外国語編 英語編
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2010/01/29/1282000_9.pdf

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5.新しい科目のポイント

新学習指導要領外国語科の目標は「コミュニケーション能力を養う」、これだけである。生徒の可能性を教師の側から制限して「こんな活動は無理だろう」などと思わず、どうやったらできるかを考えていただきたい。これまでの指導方針を180度変えて授業を行った先生方から、「生徒は意外にできますね」という感動の声を実際に多くいただいている。同時に、大学入試の結果だけを目標とせず、5年後、10年後といわず、20年後の生徒の姿、その時にどんな力が必要になるかを考えながら教育にあたっていただきたい。

今後は各学校段階において、まず小学校では英語や外国語に興味、関心を持たせていただきたい。そして中学、高校段階では英語を英語で学ばせていただきたい。中学校の学習指導要領には授業を英語で行うとは書かれていないが、小学校で外国語活動を終えて中学校に入学してきた生徒たちを高校へ送り出していく中学校でも、できるだけ授業を英語で展開していけるように、大きく変わらなければならない。

このような流れの中にあって、高校の外国語科における科目は一新され、現行の科目は1つも残らない。「コミュニケーション英語基礎」は、中学校における学習の確実な定着と、高校ですべての生徒が履修することになる「コミュニケーション英語T」への円滑な接続が目的である。「コミュニケーション英語基礎」は,新年度、かなり多くの学校で採用されるようだ。必履修科目である「コミュニケーション英語T」のポイントは、4技能を総合的に育成するということにある。「コミュニケーション英語U」では、更に、速読、精読という文言が出ているが、これを日本語ではなく英語で行うことになる。例えば、教科書中の英語をパラフレーズして、本文から英語を抜き出すだけでは対応できないようにサマリー・チャートを作って提示する。生徒はそのサマリー・チャートを完成させていく過程で、英語を用いながら精読する力が問われる。「コミュニケーション英語V」では、大学入試に合格するために受験問題集を解く、などとは書かれておらず、総合的なコミュニケーション能力を育成する集大成の科目ととらえていただきたい。高校2年生までは4技能を総合的に指導し、技能を統合的に使う授業を行っていても、3年生になって「受験が近くなったので終わり」というのでは意味がない。

「英語表現T」は話したり、書いたりする言語活動が中心であり、コミュニケーションと切り離して文法を体系的に指導する科目だと誤解しないでほしい。あくまでも事実や意見を多様な観点から考察して、論理の展開や表現の方法を工夫しながら伝える能力を養うことをねらいとしている。この科目では、即興で話すことができるようになることも求めている。「英語表現U」では、例えば、主題を決めて文章を書いたり、討論を行ったりする言語活動を展開することになる。趣旨を十分に理解した上で、これらの科目を効果的に指導していただきたい。

「英語会話」では、海外での生活に必要な基本的な表現を使って会話するという言語活動も含まれている点に留意してほしい。

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6.新しい科目を上手く展開していくために必要なこと

(1)校内研修
まずは先生方が、外国語科の目標は「コミュニケーション能力を養う」ことだということをよくご理解いただきたい。この目標を達成するために、4つの技能を総合的に育成することをお願いしている。このような先生方に求められていることについて、文部科学省や教育委員会が主催する研修などに加え、各学校の外国語科の中で、学習指導要領に書かれていることや新しい科目で育成する力への理解を深めたり、指導の方法などを検討したりする研修を行っていただきたい。
(2)学習到達目標の設定と学習指導計画の作成
学習指導要領は方向目標であるため、それを、学校ごとに独自の学習成果、学習到達目標という形に落としていく必要がある。例えば、現在、CAN-DOリスト形式による学習到達目標の設定についての検討会を文部科学省で行っているが、今後は、各学校において、卒業時点での最終的な学習成果や学習到達目標から逆算して、学年ごと、科目ごとに学習指導計画を作成していくことになる。「逆算して」というと簡単に聞こえるかもしれないが、初めて作成する場合は、かなり時間的な余裕を持っておかないと間に合わない。誰が異動してきても、誰が指導しても、同じように指導ができるようにするために、このあたりの準備は早めにお願いしたい。
(3)教科書などの教材の選び方
教材の選び方も大事である。生徒の視点に立ち、英語での言語活動を展開するために適した教材を選んでいただきたい。例えば、生徒たちの英語力のレベルに適したもので(英語が難しすぎるものではなく)、内容的におもしろいものがよい。また、本文の中で提起された問題に対して完全な解決策まで出てしまっているものよりも、生徒の考える余地が残っている教材のほうがよいであろう。
(4)授業展開
先生方が新しい指導方法に慣れるまでは、授業の展開を事前にかなり細かく決めておく必要があるかもしれない。全員の先生方が同じように動くためには、始めはある程度細かく決めておき、慣れてくれば細かなことは省いていってよいだろう。例えば、ワークシート上に、各活動の指示内容を英語で記載しておくというのも、最初は有効だと思う。また、言語活動は、生徒が飽きてしまわないように1つ1つを長くせず、5〜10分程度にする。ペアやグループでの活動を中心とした授業にし、授業の始めからペア、グループ活動を行うという意気込みが大事である。これは、1学期は日本語による指導が中心で、2学期から英語にすることが非常に難しいのと一緒で、授業開始後30分を講義形式で行い、その後にペア・ワークやグループ・ワークを行っても、生徒はとまどってしまう。最後に、参考までに、教科書を使った授業の展開例をお示しする。
■ 教科書の教材化(授業のフォーマット化)

【授業展開例】

@ Warm up:

Everyday conversation

A Review:

Listening → Note-taking → Oral summary

B What Do You Think?:

Speech, Role play, Discussion

C Outlining through Listening:

Topic, Key expressions, T-F questions

D Reading Comprehension:

Summary writing (Oral summary)

E Expressions & Structures:

Vocabulary, Idioms, Grammar

(5)観点別学習状況の評価
学習指導要領で求めていることを評価する際には、特に「外国語表現の能力」と「外国語理解の能力」を、計画的にバランスよく評価する必要がある。授業は4技能総合型にしたけれども、これまでと同じ方法で定期考査などの筆記テストのみによって評価をしていたのでは、指導と評価がかみ合わなくなる。また、生徒も授業でやっていることと評価されていることの違いに気づき、せっかくの授業が破たんしてしまう。とりわけ、「外国語表現の能力」の適切な評価を実施していただきたい(例:「話すこと」における「外国語表現能力」を見取るためには、インタビューテストなどを行うことが考えられる。事例の詳細については、国立教育政策研究所の資料*4 参照。
(6)学校全体での取り組み
言語活動は、外国語科だけではなく、学校全体で充実していくことが重要である。例えば、数学や理科の授業でもグループ・ワークを行っている学校は、外国語科での言語活動がやりやすい。そして、ご自身が担当しているクラスと他のクラスのテストの点数を比べるといったことをしないで、是非、先生方一人ひとりが、“Students in MY class”ではなく、“OUR school's students”という視点を持って、学校全体で取り組んでいただきたい。

*4 国立教育政策研究所 評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou.html
高等学校・外国語 http://www.nier.go.jp/kaihatsu/hyouka/kou/11_kou_gaikokugo.pdf

質疑応答

【質問】
授業の中でディスカッションやペア・ワークなどの活動をすることが重要だということは大変よくわかったが、教科書の本文を、和訳をせずにどのように英語で指導すればよいのか、具体的に教えていただきたい。(公立高校教師)
向後 : ゴールはあくまでも英語によるコミュニケーション能力そのものを身につけることであって、日本語に訳す力ではないという点が重要である。日本語に訳しても英語の力が身につくわけではない。ある単語がわからないために全体像が理解できないというのであれば、教師が本文を言い換えたり、ワークシート上にパラフレーズする仕掛けをつくって精読させたりするといった活動が考えられる。テクストすべてを理解させる、という考え方ではなく、活動をするためにはテクストをどのように利用したらいいか、どの情報を取らせる必要があるのかなど、指導のねらいに合わせて教科書の扱い方を考えることが重要である。
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