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・ゴリラは話すことができます。 | A gorilla can [ ]. |
・オウムは話すことができます。 | A parrot can [ ]. |
・もっとゆっくり話してもらえませんか。 | Could you [ ] more slowly? |
・今夜、大統領からみなさんにお話があります。 | Mr. President will [ ] to you tonight. |
・赤ちゃんは1歳くらいで話し始めます。 | Babies start to [ ] around one year old. |
・ジム・ブラウンさんとお話できますか? | Can I [ ] to Jim Brown? |
答えは…コラムの中で。
第4回コラムでは基本動詞の1つputを取り扱いました。今回もよく使われる基本動詞のspeakとtalkを取り上げたいと思います。speakとtalkとくれば、おそらく生徒のほとんどが「話す」を連想するはずです。日本語に訳すと同じ「話す」でも、speakとtalkの使われ方には本質的な違いがあるのです。
speakもtalkも「話す」と訳され、混乱してしまうことがあると思います。ゴリラに言語を教えている研究者が「ゴリラは話すことができる」と英語でいう場合、speak と talkのどちらを使うでしょうか。A gorilla can talk. が正しく、speak は使いません。ところが、「オウムは話すことができる」という際には、一般的に A parrot can speak. といいます。これはどうしてでしょうか。
speak といえば speak English や speak Japaneseがすぐに連想されます。このことからもわかるように、speak のコア(本質的意味)は「言語音を発する(声に出してことばを話す)」です。
<speakを使った表現例> | |
・Would you speak up? | (もっと大きな声で話してもらえませんか) |
・Could you speak more slowly? | (もっとゆっくり話してもらえませんか) |
・Please speak more clearly. | (もっとはっきり話してくれませんか) |
上記のような表現は「言語音」の大きさや速度や明瞭さの調整を依頼するものです。ちなみに、ステキな声の持ち主について、She has a nice speaking voice. といいます。「話す声がステキだ」ということですね。上のゴリラとオウムの例ですが、ゴリラは人間の言語を学ぶことができるといわれていますが、人間の言語音を発するのに適した発声器官はもっていません。そこで、A gorilla can speak. とはいえないのです。一方、オウムは人間の声を真似て発声する才能が備わっているため、A parrot can speak.といえます。
【speakのコア】
speak のコアから派生する意味合いとして「一方向性」があります。a speaker のspeaker はspeak の名詞形ですが、「講演者」と「拡声器(loud speaker)」の2つの意味があります。講演者は聴衆に向けて一方的に話をするという印象があり、拡声器から外に流れる音の様子と重なります。「今夜、大統領からみなさんにお話があります」はMr. President will speak to you tonight. となり、一方向性の speak がピッタリです。
では、talk のコアは何でしょうか。最初の例に戻りますが、A gorilla can speak.とはいえませんが、A gorilla can talk.とはいえます。
これは「ゴリラはやりとりができる」という意味合いがあるからです。つまり、talk は「言語的なやりとり」がその本質的な意味になります。ですので、「赤ちゃんは1歳くらいで話し始める」は Babies start to talk around one year old. と talk を使うのがふつうです。赤ちゃんは周りの大人に対して何かを伝えたくて(おなかがすいた、かまってほしいなど)、またそれに対して反応してほしくて、話し始めるからです。そしてここでいう「言語的な」には「音声を使った言語」だけでなく「手話」なども含まれます。
【talkのコア】
一方、オウムはというと、「オウム返し」という日本語にもあるように、基本的には人間のことばを真似て音を出すだけなので、A parrot can speak. となります。しかし、オウムを飼っている人が感情移入をしてオウムと会話が成立していると考えていればMy parrot can talk. と表現することも可能です。
「首脳会談」のことをsummit talks といいます。ここでのtalks は名詞ですが、首脳がいろいろな課題について意見を交わすことから talk が使われます。もちろん、テレビ番組で a talk show といえば、そのまま「トークショー」です。また、a walkie-talkie という表現があります。a speaker は「拡声器」でしたが、a walkie-talkieは文字通り「歩きながら相手と話を交わすための何か」ということであり、日本語の「トランシーバー」に当たります。おもしろい成句のひとつに Money talks. があります。「金が物をいう」ということで時に「地獄の沙汰も金次第」の英訳に使われる表現です。Money speaks. といえばSFの世界になってしまいます。交渉(やりとり)が背後にあるため、Money talks. が意味を成すのです。
上記のspeakとtalkの本質的な意味の違いがわかると、電話のときの以下の慣習的な会話にも納得がいきます。
Can I talk to Jim Brown? (Jim Brownさんとお話できますか?)
Speaking.(私です)
Speaking. とはHe (=Jim Brown) is speaking. の略です。電話をかけたほうはJim Brownとやりとりを希望しているのでtalkを使い、電話の受け取り手であるJim Brownは「声を出している人が当人です」と伝える(まだやりとりは発生していない)ためにspeakを使うのです。
このように、speak は「言語音を発する(声に出してことばを話す)(一方向性)」、talk は「言語的なやりとりをする(双方向性)」とそれぞれのコアを押えておけば、それぞれの本質を理解することができると思います。
※ 図は「田中 茂範 (編集)、武田 修一 (編集)、 川出 才紀 (編集)、Eゲイト英和辞典、ベネッセコーポレーション」より引用
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