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1. ( )a window | 窓を割る |
2. ( )bread | パンをちぎる |
3. ( )one's promise | 約束を破る |
4. ( )a horse | 馬を調教する |
5. ( )a hundred dollar bill | 100ドル札をくずす |
6. My voice( ). | 声変わりをした。 |
答えは…コラムの中で。
第4回コラムでは基本動詞 のput 、第5回コラムではspeak / talkを取り扱いました。その際「put=置く」、「speak / talk=話す」という1対1対応の日本語では捉えられない意味の広がりについてお話ししました。そこで、今回は基本動詞の1つ「break」を取り上げたいと思います。break といえば break a vase (花瓶をこわす)や break a window(窓を割る)のような例を思い浮かべる人が多いようですが、break には実にさまざまな意味があります。上の例の「(パン)をちぎる」「(約束)を破る」「(馬)を調教する」「(お金)を崩す」「(声変わり)をした」など、1つ1つ日本語の対応語を通して break の意味を理解しようとすると大変です。break の意味の広がりを理解するコツは、その本質的意味(コア)を理解し、そこからどのように意味が展開するかを知ることです。
図1
break は「こわす」と理解している人が多いようです。基本的には「こわす」ということなのですが、大切なのは「何を」こわすのかです。結論からいえば、break の本質的意味(コア)は、「(力を加えて)形・流れをコワス」と記述することができます。自動詞的に表現すれば「形・流れがコワレル」となります。図1は「形」と「流れ」に注目した break のコアを表したものになります。
つまり、「形をコワス」場合は「形を損なわせる」という意味合いが出てきます。そして、「流れをコワス」ということから「流れを断つ(絶つ・中断する)」という意味合いが生まれます。break のさまざまな用法はこの2つの意味合いの転用だと考えることができます。
このように、breakの本質的意味(コア)を理解することで、日本語の「こわす」とくれば何でも break だとの思い込みから起こりがちな以下のような間違いも防ぐことできるかと思います。
<breakを 使わない 用例> |
「その国との友好な関係をこわす」 |
・destroy /spoil a friendly relationship with the nation |
「胃をこわす」 |
・upset someone's stomach |
「夢をこわす」 |
・ruin someone's dream |
まず、「形をコワス」の break はいろいろな状況で使われます。日本語で言えば「窓を(割る)」「(パン)をちぎる」「(枝)を折る」「(腕)を折る(骨折する)」などすべて break を使って表現します。
<用例> | |
・break a window | 窓を割る |
・break bread | パンをちぎる |
・break branches from a tree | 木から何本かの枝を折る |
・break one's arm | 腕を折る |
これらがイメージ上で共通しているのは「形をコワス(損なわせる)」ということです。
また、「形」といっても具体的なものだけでなく「心」も形(ハート)のあるものとして捉えて、break one's heart(心理的な力を加えて傷つける)のように表現します。また、場をなごやかにするために話の口火を切るという意味で、break the ice という熟語もあります。氷が「盛り上がらない沈黙状態」を比喩的に表現しており、それを「割る」ということです。氷が割れれば、新たな展開が期待できます。
<用例> | |
・break one's heart | 傷つける |
・break the ice | 話の口火を切る、緊張をほぐす |
「形をコワス」から派生するおもしろい例として、Can you break a hundred dollar bill?「100ドル札をくずしてもらえますか」という例があります。これは100ドル札の価値を細分化するというイメージです。break tasks into 5 stages「タスクを5段階に分ける」という用例はまさに「分類する、分解する」という意味で、この分類に当てはまります。
<用例> | |
・Can you break a hundred dollar bill? | 100ドル札をくずしてもらえますか? |
・break tasks into 5 stages | タスクを5段階に分類する |
一方、動きをbreakすれば、「流れをコワス」となります。これは「流れを断つ(絶つ)」「中断する」、あるいは「動きを変える」という意味合いです。a coffee break といえば、長引いた会議などでの「中休み」のことです。ちなみに、breakfastのbreakも同じで、「断食(fast)を中断する(break)」ということです。この場合は前日の夕食から翌日の朝食までの間隔が、その他の食事の間隔よりも長いために、朝食のみこういう言い方をします。
また、すでに日本語にもなっている a windbreaker(ウィンドブレーカー)も風の流れをさえぎるという意味です。They broke their journey to Kyoto at Nagoya. といえば「彼らは京都への旅を名古屋で一時中断(途中下車)した」という意味です。「約束を破る」は英語では break one's promise という言い方をします。この場合、「約束」を「形」として捉えるか「流れ」として捉えるか微妙なところがありますが、「約束を守る」は keep one's promise といいます。約束の効力が維持されるというのが keep one's promise で、それが何らかの理由で断たれると「約束は破られた」ということになります。似たような例では「ルールを破る」break the rules もありますね。
<用例> | |
・a coffee break | 休憩 |
・breakfast | 朝食 |
・a windbreaker | ウィンドブレーカー |
・They broke their journey to Kyoto at Nagoya. | 彼らは京都への旅を名古屋で、 一時中断(途中下車)した |
・break one's promise | 約束を破る |
・break the rules | ルールを破る |
「流れをコワス」からは「変化」を読み取ることができます。わかりやすい例として「変化球」のことを a breaking ball と言います。「折れ線」も a broken line といいます。ある方向に向かって一定に流れていたものが向きを変えるということです。冒頭の「声変わりをした」も My voice broke at the age of twelve. と言います(break one's voice という言い方もします)。これも変化の例とみなすことができます。また、よく使う例として「馬を飼い馴らす」ということを break a horse と言います。馬の調教は、馬の本来の野性的な面を訓練でbreak(変化)させ、人がコントロールできるようにすることだと考えると break の意味合いが感じられるでしょう。
<用例> | |
・a breaking ball | 変化球 |
・My voice broke at the age of twelve. | 12歳のときに声変わりした |
・break a horse | 馬を調教する |
自動詞用法でも「形がコワレル」と「流れがコワレル」の2つがあります。波が岩に当たって砕ける様子を Waves are breaking against the rocks. と表現するのは「形がコワレル」の例です。一方、野球で「今日は彼のカーブはキレがある」を His ball is really breaking today. と表現することができますが、これも「(直線の)流れがコワレル(変化)」の例ですね。
<用例> | |
・Waves are breaking against the rocks. | 波が岩に当たって砕けている |
・His ball is really breaking today. | 今日は彼のカーブはキレがある |
以上をまとめると、break の「形・流れをコワス」という本質的意味は、次のような意味的な広がりを持っていると言えます。
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