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【連載】先生、これは英語でどういうんですか?
−生徒が間違えやすいことを、本質的な意味から考え、指導に生かす

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Q, (   )には同じ単語が入ります。何を入れますか。
1. (   ) a decision 決定をする
2. (   ) an appointment 約束をする
3. (   ) a good impression よい印象を与える
4. (   ) a big success 大成功する

答えは…コラムの中で。

第9回 makeは『作る』ではないんですか?
慶應義塾大学 田中茂範


makeとくれば「作る」をすぐに連想すると思います。しかし、それだけでは、makeの理解としては不十分です。例えば、タクシーに乗っている状況で、Can you make the airport by five o'clock? といえばどういう意味でしょうか。もちろん、「空港を作る」ということではありません。「5時までになんとか空港まで行ける?」と問う状況です。また、makeには「〜させる」という使役用法もあります。使役用法については、haveとの意味の違いがうまく説明できないという先生も少なくありません。makeのコア(本質的意味)を知ることで、使役用法などのmakeの構文の理解にも役立てましょう。

make のコア=手を加えて何かを作る

makeのコアは、以下の図で示しているように、「何かに手を加えて何かを作る」というものです。「何か(典型的には素材)」と「作品・産物」の2つがmakeを理解するうえでは重要です。

代表例として、She made a delicious cake. (彼女はおいしいケーキを作った)があります。薄力粉、卵、牛乳、砂糖などの「素材」があり、それに手を加えて、ケーキという「作品・産物」を作るということです。何かを作る場合のmakeでは、「作られるもの」が肝心なので、She made a delicious cake.のように、その素材は前提として示されないことがよくあります。

日常的によく使うmake

また、makeは大変よく使われる動詞ですが、日常会話で実際によく使われるのは、以下のような連語です。

make an appointment(約束[予約]をする)、make a decision (決定をする)、 make a lot of money (たくさんのお金を稼ぐ)、make a profit (利益をあげる)、 make a big difference (大きな違いを生む)、make a big discovery (大発見をする)、make a big mistake (大間違いをする)、 make a big deal (大騒ぎする)、 make a big success(大成功する)

これらの連語では、makeの対象が具体物ではありませんが、「何かに手を加えて何かを作る」というコアが根底にあります。例えば、「約束(an appointment)」や「決定(a decision)」だと、それに至るまでにいろいろな調整をして(手を加えて)、約束とか決定という形になったということになります。

makeのコアの中の「手を加えて」を、「なんとかして」という意味で捉えると、次の例文をすんなり理解することができます。Bill tried to make a good impression on her parents. だと「ビルは彼女の両親によい印象を与えるように努力した」ということですが、「よい印象(a good impression)をなんとかして作った」というのがこの表現にある感覚です。

make+名詞+into+名詞

これまでは make + 名詞(代名詞)を例に見てきましたが、make の対象になるのはモノだけではありません。次の文を見てみましょう。

  • ・John made grapes into wine. ジョンはブドウでワインを作った。

素材と作品の関係でいえば、ブドウが素材で、ワインが作品です。しかし、ここでのmake の対象はgrapes ではありません。make の及ぶ範囲は、[grapes into wine]で、ブドウに手を加えてワインにするという過程がそのまま表現されています。ここで注目したいのは、make wineではなく、make grapes into wineと表現しているという点です。そして、make grapes into wineでは「ぶどうをワインに変える状況」をmakeするということです。make wine out of grapesだとwineがmakeの目的語で、out of grapesは素材を示す表現です。しかし、make grapes into wineは形の上では同じでも、makeの作用する範囲はgrapesではなく、[grapes into wine]全体なのです。

make+名詞+名詞

次に、make + 名詞+名詞の構文を使ったものを見てみましょう。

  • ・I'm going to make this city a better place for young people.
     私はこの町を若者にとってよりよい場所にするつもりだ。
  • ・We will make Chiba a city of international tourism.
     我々は千葉を国際観光都市にする。

これらの例では、すべてmake [名詞 BE 名詞]という意味関係が見られます。例えば、make this city a better place for young people の部分は、make [this city BE a better place for young people] となり、「この町が若者にとってよりよい場所である」という状況を作るということになります。All work and no play makes Jack a dull boy. という諺があります。これは「勉強ばかりして遊ばないと子どもはつまらない子になる」ということですが、make [Jack BE a dull boy] 、つまり「ジャックがつまらない少年である」という状況を作るという意味関係が含まれています。

使役用法

最後に、make には使役用法があります。典型的には「人を〜させる」という意味合いの表現です。まず、以下の例を見てみましょう。

  • ・She always makes me happy.
      彼女はいつでも僕を幸せにしてくれる。

She always makes me happy. は、意味関係としては make [me BE happy]となり「私が幸せである」という状況を作るということです。これは、make+名詞+形容詞の構文で、「人を〜の状態にさせる」ということになります。

「(相手が嫌だと言っても)人に〜という行為をさせる」という状況でも make を使います。例えば「ほうれん草が苦手なのに、お母さんに毎日食べさせられる」という状況がそれです。これを英語では、Mom makes me eat spinach every day.と表現します。これはmake [me EAT spinach every day] という意味関係で、me と spinach の間に動詞が入っています。解釈としては、「僕が毎日ほうれん草を食べる」という状況をお母さんが作り出すということです。make の「何かに手を加えて何かを作る」というコアの「手を加えて」の部分が、「なんとしても」の意味合いになり、強制力が生まれるのです。Love will make you do wrong. といえば、「愛で人は間違ったことをしてしまうことがある」といった意味合いでしょうか。これも「愛」というものが正常な判断を防げて何か悪いことをさせてしまうという強制力を感じさせる表現です。

使役用法 makeとhaveの違い

haveにも使役用法があり、makeと違いがわからないという生徒がいます。makeのコアは「何かに手を加えて何かを作る」ということで、「させる」の意の使役用法になっても、「変化(手を加える)」と「産物」の両方が関係します。そして、前述のように「手を加えて」の部分は「なんとかして」という意味合いになり、そこで強制力のようなものが生まれるのです。

一方、haveのコアは「自分のところに何かを持つ」ということで、使役では「産物」のみに強調点が置かれます。ここでいう「産物」は「期待される状況」ということで、have someone do itといえば「誰かが何かをする状況」が産物で、それを確保するというのがhaveです。そこで、立場の上の者が(権限で)下の者に「何かをちゃんとやらせる(やってもらう)」という状況ではhaveがぴったりです。先ほどのほうれん草の例でも、I'll have him eat spinach.といえば、「彼にちゃんとほうれん草を食べさせる(ほうれん草を食べる状況を持つ)」という感じになります。

このようにmakeの「手を加えて」というコアを拠り所に、その構文的な可能性を見ていくとmakeという動詞の持ち味がより深く理解できると思います。

 

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